2016年12月9日金曜日

New Orleans Jazz I

 Jazzはアメリカ南部最大の都会であるLouisiana州New Orleansで19世紀の末に発生しました。NOはイギリス、スペイン、フランスに占領された経歴を持ち、さらにアフリカ系の奴隷の子孫、カリブ海の島々からの移民、もちろんヨーロッパからの移民、最終的にはアメリカの軍港となってさらに多くの文化が入り乱れました。そのような混沌の中から文化の融合が起こり誕生したのが稀にみるユニークな音楽形式であるJazzだったのです。
 Jazzは最初、アフリカ系黒人が祖国から持ってきたものと解釈された時期もあります。いろんな
人がアフリカの音楽を調べた結果Jazzとの関連が指摘できるものは見つかりません。19世紀ともなると、アフリカ系黒人といえども言葉はすべて英語、宗教はキリスト教、楽器はヨーロッパ伝来のもの、曲はご主人の歌うヨーロッパの民謡ということになり、彼らにアフリカ時代の記憶は既に無かったのです。
 初期のJazzの要素は①ヨーロッパの楽器、②ヨーロッパのハーモニー、③マーチのリズムとすべてヨーロッパ仕込みのものです。それに19世紀末に既存の音楽であったラグタイムが融合して、アドリブを重視するJazzが誕生したのでした。
 このCDはJazzの最初の録音である1917年のODJB、ジャズの創始者と言われるBuddy BoldenのBandでコルネットを吹いていたましたが引退していたBunk Johnsonの演奏などを集めたものです。


New Orleans Jazz I
Blurbird BVCJ-5101

1  Livery Stable Blues (LaRocca)
2  At The Jazz Band Ball (LaRocca-Shield)
3  Ostrich Walk (LaRocca-Shields)
4  Bluin' The Blues (Ragas)
5  Fidgety Feet (LaRocca-Shield)
6  Sensation Rag (Edwards)
7  Skelton Jungle (LaRocca)
8  Clarinet Marmalade (Shields-Ragas)
9  Tiger Rag (LaRocca)
10 Original Dixieland One Step (LaRocca)
11 Shag (S.Bechet-J.Jordan)
12 Sweetie Dear (J.Jordan)
13 Lay Your Racket (S.Bechet-B.Maxey)
14 One O'Clock Jump (C.Basie)
15 Egyptian Fantasy (S.Bechet-J.D.Reid)
16 Limehouse Blues (P.Braham-D.Furber)
17 Sister Kate (A.J.Piron)
18 Just A Closer Walk With Thee (PD)
19 Snag It (Oliver)
20 One Sweet Letter From You (Warren-Brown-Clare)
21 When The Saints Go Marchin' In (Purvis-Black)
22 High Society (Steele-Williams)
23 Dark Town Strutters Ball (Brooks)
24 Franklin Street Blues (L.Dumane)

1  1917 Feb. 26  NYC
2,3 1918 March 18  NYC
4,5,6 1918 June 25  NYC
Original Dixieland Jazz Band
Nick LaRocca(cor),  Eddie Edwards(tb), Larry Shields(cl), Henry Ragas(p), Tony Sbabaro(ds)

1917年NOからChicagoに進出していた白人バンドODJBは史上初のJazzの録音の栄に浴します。聞いてみると古色蒼然としていますが、内容はさらっとした白人Dixieバンドのご先祖のような演奏です。曲はNO伝来の民謡なのでしょう。このバンドのメンバーの名前がクレジットされていますが、本当に彼らが作ったものか、殆どあてになりません。
Livery Stableとは「馬預け場」(西部劇でときどき見ます)のことで、馬のイナナキを模した音が入っています。Ostrichは駝鳥、Tiger Ragも虎の鳴き声を模した一種のコメディソングないしはノベルティソングだったようです。その効果音のおかげで大ヒットしJazzを世間に認知せしめることとなりました。

7  1936 September 25  NYC
8,9,10 1936  November 10   NYC
Original Dixieland Five
Nick LaRocca(cor),  Eddie Edwards(tb), Larry Shields(cl), J. Russell Robinson(p), Tony Sbabaro(ds)

最初の録音から19年後に死んだピアノのRagasを除いたメンバーが再開して録音したものです。20年の間にJazzは発展してこの頃はSwing時代真っ盛りですが、演奏は古典的な内容です。

11,12,13  1932 September 15  NYC
The New Orleans Feet Warmers
Tommy Ladnier(tp), Teddy Nixon(tb), Sidney Bechet(cl,ss), Henry Duncan(p), Wilson Myers(b,vo), Morris Moland(ds), Billy Maxey(vo)

14 1940 February 5  NYC
Sidney Bechet and The New Orleans Feet Warmers
Sidney Bechet(cl,ss,vo), Sonny White(p), Charlie Howard(g), Wilson Myers(b,vo), Kenny Clarke(ds)

15  1941 January 8 NYC
Sidney Bechet and The New Orleans Feet Warmers
Henry Red Allen(tp), J.C.Higginbotham(tb), Sidney Bechet(cl,ss), James Tolliver(p), Wellman Braud(b), J.C.Hard(ds)

16  1941 September 13
Charlie Shavers(tp), Sidney Bechet(cl,ss), Willie "The Lion" Smith(p), Everett Barksdale(g), Wellman Braud(b), Manzie Johnson(ds)

Sidney Bechet(Ⅰ897-1959)は初期のジャズのアドリブ奏者として極めて重要です。NOのコンゴ広場にはLouis Armstrongの銅像と並んで、Sidney Bechetの胸像が置かれています。非常にビブラートの強いクラリネットとソプラノサックスを吹きます。個人的には強いビブラートは好みではないのですが、聞いているうちにそのことを忘れさせてしまう圧倒的な力を持っています。1950年代から晩年はフランスで過ごし、圧倒的な人気を誇り、録音も星の数ほどあります。


17,18,19,20  1945 December 6 NYC
21,22,23,24  1945 December 19 NYC
Bunk Johnson and his New Orleans Band
Bunk Johnson(tp), Jim Robinson(tb), George Lewis(cl), Alton Purnell(p), Lawrence Marrero(bjo), Alcide "Slowdrag" Pavageau(b), Baby Dodds(ds)

 Bank Johnson(1879-1949)はBuddy Bolden(1877-1931)で2nd Cornetを吹いていたことで名前が知られていましたが、それまで録音はありませんでした。1930年代になって、Jazzの起源を真摯に研究し始めた白人たちは、録音の無いBuddy Boldenがどのような音楽を演奏していたのか知りたくてNOの古老たちを訪ねました。そうして発見されたのがNOを離れて久しかったBunk Johnsonでした。Bunk JohnsonとNOに留っていた6名のミュージシャンで古いNOのJazzを再現すべく録音されたのがここに聞く演奏です。
Bunk JohnsonはBuddy Boldenとはわずか2歳違い、出来上がった録音を聞いてみて、これはBuddyの音楽に近い、いやこんな筈ではないと論争が起こりましたが、本当のことは誰にも分りません。聞いてみる限り、他のメンバーはともかく、Bunk Johnsonに関してはLouis Armstrong以降の20世紀生まれのtp奏者の逆影響を大きく受けているようです。Bunk自身はこんな古い曲は演りたくなかったようで、Harry James楽団のヒット曲Chiribiribinを演ろうとして他のメンバーと衝突したりしました。進取の気性とも言えますが、我の強いジジイという伝説も残してしまいました。自分が歴史の中で求められる役割を認識して、上手に振る舞うことが出来れば、Jazzの創始者にもなれた逸材だったかも知れません。
 演奏は、1945年らしい音がする再演物といった感じです。数年後クラリネットのGeorge Lewis(このバンドにも加わっています)は、もっと古色を湛えた素朴な(それらしい)演奏で人気を得、日本にもたびたび来演しました。ちなみに、12月6日と19日の間にGeorge Lewisは歯を14本抜いたと言われています。それでよくクラリネットが吹けたものです。
トロンボーンのJim Robinson (December 25, 1892 – May 4, 1976) は後年までNOのPreservation Hallで演奏を続け、1974年日本で生命保険会社のCMに登場したことがありました。
バンジョーのLawrence Marrero (October 24, 1900 – June 5, 1959)は1953年のOhio州立大学での熱演が非常な評判となり世界的に有名となりました。
これらの演奏は史的な価値を噛みしめながら聞くと新発見がありそうです。




























0 件のコメント:

コメントを投稿